おじいさんフォーを愛してくださった皆様へ

― 最後のご挨拶 ―

この文章を書くことを、ずっと迷っていました。

何から書けばいいのか、どう書けば自分の気持ちを皆様に伝えられるのか、今でもよく分かりません。

ただ、これまで「おじいさんフォー」に来てくださった皆様に、最後にどうしても自分の言葉で伝えたいことがあります。

「おじいさんフォー」は、2025年1月31日をもちまして、営業を終了いたしました。

本当は、もっと続けたかった。

本当は、もう少し皆様と一緒にいたかった。

そして何より、もっとたくさんの方に「おじいさんフォー」のフォーを食べていただきたかった。

今でも、そう思っています。


お店を始める前のこと

お店を始める前、私は本当に楽しみにしていました。

「ここでお店を始めたら、どんなお客様が来てくれるだろう。」

「ベトナムのフォーを食べたことがない人にも、ぜひ食べてもらいたい。」

そんなことを考えながら、毎日のようにお店のことを考えていました。

店内の雰囲気も、飾り付けも、置くもの一つひとつまで、自分なりに考えました。

そして、料理についても、本当にたくさん考えました。

ただ「ベトナム料理を出せばいい」とは思っていませんでした。

せっかく日本でベトナムのフォーを食べてもらうのなら、

「これがベトナムのフォーなんだ」

「昔からベトナムで食べられてきた、あの味なんだ」

そう感じてもらえるようなフォーを作りたいと思っていました。

自分が思い描いていたのは、今風にアレンジしたものではなく、できるだけ昔ながらの、**「おじいちゃん、おばあちゃんが作ってくれたような、どこか懐かしい、ベトナムらしいフォー」**でした。

調味料一つを選ぶときも、

「これなら日本のお客様にも美味しく食べてもらえるだろうか。」

「でも、ベトナムの味を変えすぎてはいないだろうか。」

そんなことを何度も考えました。

一杯のフォーを作るために、たくさんのことを考え、たくさんの時間を使いました。

それくらい、私にとって「おじいさんフォー」は大切なお店でした。


雨の日も、寒い冬の日も

営業が始まってからは、毎日が勉強でした。

お客様が少ない日もありました。

雨の日もありました。

寒い冬の日もありました。

「今日は誰も来なかったらどうしよう。」

そんなことを考えながら店に立っていた日もあります。

それでも、お客様が一人、また一人と入ってきてくださると、本当に嬉しかった。

「いらっしゃいませ」

と声をかけて、

フォーを作って、

お客様の前に料理を置く。

そして、お客様が食べている姿を見ながら、

「美味しいと思ってくれているかな。」

「ベトナムの味を楽しんでくれているかな。」

そんなことをいつも考えていました。


忘れられない瞬間

今でも忘れられない瞬間があります。

お客様がフォーを食べ終わった後、器を見ると、スープまできれいに飲み干してくださっている。

その姿を見ると、本当に嬉しかったです。

「よかった。」

心の中で、何度もそう思いました。

自分が一生懸命作ったものを、お客様が最後の一滴まで美味しく食べてくださった。

それだけで、その日の疲れが全部なくなるような気持ちになりました。

Googleマップにお客様が書いてくださった口コミも、何度も読み返しました。

良い評価や温かいコメントをいただいたときは、

「自分がやってきたことは間違っていなかったんだ。」

「頑張ってきてよかった。」

そう思うことができました。

お客様からいただいた一つひとつの言葉が、本当に大きな力になっていました。


ベトナムのライムを探して

こんな小さなことも、今では大切な思い出です。

ベトナムのライムを使いたくて、わざわざCostcoまで買いに行ったこと。

近くで簡単に買えるものではなかったので、少し遠くても、ベトナムのライムが売っていると知れば、買いに行きました。

「美味しいフォーを作るためなら、これくらいはしないと。」

そんな気持ちで、何度も買いに行きました。

今思えば、そんな一つひとつのことまで含めて、「おじいさんフォー」を作っていたんだと思います。


お客様との会話

そして、料理だけではありません。

「おじいさんフォー」で出会ったお客様との時間も、私にとって大切な思い出です。

フォーを食べながら、

「ベトナムってどんな国なの?」

「ベトナムでは何を食べるの?」

「ベトナムの人はどんな生活をしているの?」

そんな話をすることもありました。

日本に住んでいる私たちにとっては普通の日常でも、お客様にとっては初めて聞く話だったりする。

逆に、お客様から日本のことや、ご自身の経験について教えていただくこともありました。

本当にいろいろな方が来てくださいました。

面白い方もいました。

優しい方もいました。

何度も通ってくださる方もいました。

一度来て、それからまた友人やご家族を連れてきてくださった方もいました。

お店をやっていなければ、きっと出会うことのなかった人たちです。

私は、そんな出会いが本当に好きでした。


だからこそ、終わらせたくなかった

そんな時間を過ごしてきたからこそ、今回お店を閉めなければならなくなったことは、本当に辛いことでした。

私は、自分から「もうお店をやめよう」と思ったわけではありません。

これからも、この場所で営業を続けたいと思っていました。

まだやりたいこともありました。

もっと美味しいフォーを作りたかった。

もっとたくさんの方に食べてもらいたかった。

そして、いつも来てくださるお客様と、これからも会いたかった。

しかし、店舗の賃貸借契約について、建物所有者から今後の契約継続が難しいという意向が示され、これまでと同じ場所で営業を続けることができなくなりました。

私も、何とか続ける方法がないか、いろいろと考えました。

できる限りのことをしました。

それでも、最終的にはどうすることもできませんでした。

自分の意思で終わらせるのではなく、続けたいと思っているのに続けられない。

それが、本当に悔しかったです。


もっと早く、皆様に伝えたかった

そして、もう一つ心残りがあります。

それは、皆様に十分な時間をかけて、閉店のお知らせをすることができなかったことです。

「また今度行こう。」

そう思ってくださっていた方もいたと思います。

「またあのフォーを食べたい。」

そう思ってくださっていた方もいたと思います。

私も、皆様に一人ひとり、

「今まで本当にありがとうございました。」

と直接伝えたかった。

最後の日まで、お客様と笑いながら過ごしたかった。

でも、それができませんでした。

突然のお知らせになってしまったことを、本当に申し訳なく思っています。


今、私は皆様のことをとても懐かしく思っています

お店がなくなった今、

雨の日に店の前を通ったこと。

忙しい日に厨房で走り回っていたこと。

お客様が笑っている姿。

フォーを食べ終わった後の器。

Googleマップに届いた口コミ。

お客様との何気ない会話。

「美味しかったです。」

「また来ます。」

と言ってくださった言葉。

そんな一つひとつのことを、今になって何度も思い出します。

そして、皆様に会えなくなったことが、とても寂しいです。

私は、本当に皆様のことが恋しいです。

「おじいさんフォー」という小さなお店でしたが、私にとっては、そこに来てくださった一人ひとりのお客様が、とても大切な存在でした。


もし、また機会があるなら

今はまだ、これからのことは分かりません。

でも、もしまたいつか機会があるなら、

私はもう一度、皆様に会いたいです。

そして、もしできることなら、またどこかでフォーを作りたい。

また皆様に食べてもらいたい。

また、

「美味しかった。」

と言ってもらえるようなフォーを作りたい。

そして、もしもう一度宮原という場所で何かをする機会があるなら、私はまたあの場所に戻りたいと思っています。

「おじいさんフォー」で過ごした時間は、それほど私にとって大切なものでした。


最後に

お店を始める前のワクワクした気持ち。

一つひとつの飾りを選んだこと。

料理の味を何度も考えたこと。

雨の日。

寒い冬の日。

忙しくて大変だった日。

お客様がたくさん来てくださった嬉しい日。

スープまで飲み干してくださったお客様。

Googleマップに残してくださった温かい口コミ。

Costcoまでベトナムのライムを買いに行ったこと。

お客様とベトナムについて話したこと。

たくさんの素敵な方々との出会い。

そのすべてが、私にとって大切な思い出です。

お金も、時間も、体力も、そして自分の気持ちも、本当にたくさん使いました。

大変なこともたくさんありました。

それでも、今振り返ると、

「おじいさんフォー」をやってよかった。

心からそう思います。

なぜなら、このお店をやったことで、たくさんの素敵な人たちと出会うことができたからです。

そして、私が作った一杯のフォーを、誰かが美味しいと思ってくれた。

それだけで、私にとっては十分に意味のあることでした。

おじいさんフォーに来てくださった皆様。

何度も通ってくださった皆様。

応援してくださった皆様。

口コミを書いてくださった皆様。

一度でもフォーを食べてくださった皆様。

そして、「おじいさんフォー」というお店を覚えていてくださる皆様。

本当に、本当にありがとうございました。

最後に、皆様に直接お会いして伝えることができなかった分、この文章に私の気持ちを込めました。

今までいただいた皆様の優しさや笑顔を、私はこれからも忘れません。

そして、いつかまたどこかでお会いできる日が来ることを、心から願っています。

そのときは、もう一度皆様に、

「ただいま」

と言える日が来たらいいなと思っています。

そして皆様にも、

「おかえり」

と言っていただけたら嬉しいです。

今まで本当にありがとうございました。

そして、さようならではなく、

また、いつか。

「おじいさんフォー」を愛してくださったすべての皆様へ。

心からの感謝を込めて。

ありがとうございました。